古宮九時さんの作品です。
おススメされて読みましたが、とても楽しく読めました。
青春小説とありまして、
恋愛要素が全くないわけじゃないですが、夢追い人の物語です。
まあ少なからず、私自身も夢を描き、夢を追ってみたものの、
現実との折り合いから、自身の生き方に煩悶してきた中年男ですから、
共感できるところは多くあったと思います。
他人の評価よりも原点回帰。
気負いからの萎縮は、自分らしい時間を奪いかねない。
そして、アイデンティティが見えてきたのなら、
雑音があったとしても、見失わないことが賢明。
テーマ的には、そんなことを思いましたが、
その内容以上に、私の心を射止めたのは、ヒロインの健気さでした。
萌えキュンってコレでしょうか?もう・・・いじらしくて、可愛らしい。
文面から、応援したくなるようなヒロイン像が湧いてきました。
そして、ヒロインを導く青年もまた、かっこ良かったと思います。
総じて登場するキャラクターが生き生きとしていました。
まさに、これが青春だ・・・って感じでしょうか。
そして楽しく読めて素敵な作品ですから、
あまり水を差すようなことは述べたくありませんが、
現実を考えれば、このテーマは贅沢だと思わない訳でもありません!?
夢が叶わなくとも、夢が追える時間が持てるということは、
やっぱり恵まれているとしか思えません。
なぜならその間の生活は、いったい誰が支えているのでしょうか!?
世間一般には親の庇護を受けているのでしょうが、
充分な教育を受けさせることができない親だって珍しくないでしょう。
豊かな社会では、子供に目標を定め、夢を描くことを教育が求めました。
生きることが精一杯で、衣食住があるだけでも幸せな時代とは違うのでしょう。
ですから夢を追って、夢に振り回される経験も、
恵まれた現代社会ならではの産物かもしれないなぁ~と、私は思うのでありました。