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晴れやかなる四十路へ!

映画「神と人との間」鑑賞


先月、谷崎潤一郎の「痴人の愛」を読んだので、
続けざまに谷崎潤一郎を楽しもうと「神と人との間」という映画を観て来ました。

「TANIZAKI TORIBUTE」と銘打って、他に2作も映像化されているらしいですが、
私の心に一番訴えかけてきたのが「神と人との間」でした。
鑑賞後、やっぱり観てよかったと思えた作品でした。
耽美主義と云われる文豪、谷崎潤一郎という作家の何某かにふれた気がします。

色恋のもつれを、ありえるかも?と思わせるような展開で、
丁寧に描いていると思います。
まぁ、私が触れた二つの作品は悲劇的な面もあるのですがね。

もともと谷崎潤一郎自身が、
最初の妻を佐藤春夫氏に譲った・・・「細君譲渡事件」をモチーフに、
小説としたのですが、
今回は、それを現代風に監督が脚色して映画作品に仕上げたようです。

そもそもの設定が自分の奥さんを譲っちゃうのですから、
世間一般の常識では考えづらいと思います。
自分の恋慕の情に迷い、幸せにする自信がなくて、お人好しとバカにされても、
三角関係ならば身を引くことで、
相手の幸せを願う気持ちは・・・わからなくもない・・・!?

臆病で自信も無くて、なかなか度胸がもてない、
そういう人ってどこかに居そうですよね。

しかしながら、譲られたら譲られた方も、
疑心暗鬼になって、気持ちを拗らせてしまうし、
女性の身としても、心に影を落としたまま、
新しいパートナーと生活をしなければなりません。

主人公は、その三角関係の絡まった糸をほどこうとして、
一生懸命になるのですが、余計に絡ませてしまうような作品でした。

もうね・・・その生真面目さが、
私には、とても滑稽に映ってしまって仕方がなかったです。

生真面目さを責めるのは少し酷ですが、
もっと視野を広くして、気持ちを切り替えていかないと、
みんなを振り回してしまうことがあるのでしょうね。

やっぱり人との出会い方より、
人との別れ方が難しいということだと思います。


また、映画として濡れ場のシーンもあって、
文芸には無い映像として楽しむことができますが、
愛より快楽がまさる濡れ場は、もの悲しく思います。

諦観と逃避の果てに行き着く、倒錯的な濡れ場は、
いくら美しく描いたとしても、
残念な気持ちが湧いてしまい、陰ができるものですな。


鑑賞後、清々しい爽快感があるとは、とても言えませんが、
さすが文豪としての評価が高い谷崎潤一郎・・・と、
深みを感じてしまう内容の作品だと思います。


by ambitious-n700 | 2018-02-09 10:39 | 漫画・TV・映画等 | Comments(0)
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