「峠うどん物語」上下巻を読み終わりました。重松清さんの作品です。
いいですね、以前に読んだ「その日のまえに」といい、
重松ワールドは私と相性がいいのかもしれないと思いました。
まぁ内容はちょっと暗いけどね。
タイトルどおり、峠にあるうどん屋さんのお話ですが、
店前に斎場が出来てしまい、そこに訪れる人間模様を描いた作品です。
そして、人前で涙を見せることが殆どない私には、ぴったりの物語でした。
葬儀の場で、人の死を前にして、
涙が出せない人たちの心の機微がテーマです。
涙が出るほど悲しめればいいのだが、泣いてもいられなかったり、
もしくは、それほど近しくなかったりして、
漫然としたやるせなさを抱える者に、優しさを投げかけています。
心の中の弔意の強さなんて、やっぱり言葉では計れません。
自身が持つ弔意ですら計りかねるだろうから、
葬儀と言う形式をとって、人々は気持ちを落とし込み、
整理をつけていくものかもしれません。
また立派な葬儀であっても弔意がなければ、それは形骸化してしまうだろうし、
むしろ故人に対して、明確な弔意があるならば、
葬儀に参列できなくとも、人それぞれの弔い方で良いのかもしれません。
そんなことを思いました。
まぁ、型から入るのもよし、型に囚われずともよし、
まずは何よりも、向き合うことが大切なのだろうと思うのでした。
題材は湿っぽいですが、努めて軽く描いている配慮もあって、
相変わらず、私の涙腺は刺激されることもなく、
ほんのりと心に感動を与えてくれる良い作品でございました。