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晴れやかなる四十路へ!

「本日は、お日柄もよく」読了

「本日は、お日柄もよく」読了。

原田マハさんの著作です。
スピーチライターを題材にした小説ですが、
前半と後半で色合いが違います。

前半は披露宴スピーチ、後半は選挙スピーチを絡めて描いています。

しかしながら、私はいまひとつ主眼となるテーマが感じ取れなかったです。
エンターテイメント小説でもあるし、
スピーチの実用書的な面もあるのでしょうか?

選挙の駆け引きのボリュームが大きくて、政治的側面も見えますが、
私との政治信条は残念ながら咬み合いませんでした。

私も、冠婚葬祭でスピーチをしたことはありますが、
準備をしていれば、ある程度の失敗をしたとしても、
覚悟をもって、どうにか乗り切れると思います。

しかし以前に、葬儀の場で、突然に挨拶を頼まれたことがあり、
同じ言葉を繰り返すことしかできないまま、
一向に話はまとまらず、グズグズになって赤面したことがあります。

よしんば、そんなときにも凌げる方法が知りたかったですね。


スピーチライターが題材ですから、その原稿、ひいては言葉についても、
作家の感性が溢れているのかと、過度に期待してしまったのですが、
残念ながら、私には、もう一押し、キラッと輝るセンスが欲しいように感じました。

作中で「涙」という言葉が多く出てくるのですが、
私自身は涙ぐむこともなく、最後まで読了してしまいました。
登場人物が涙するスピーチのシーンであっても、
読者の私までは、その感動が伝わってこなかったわけです。

情景描写が期待するより少なく、「涙」という言葉だけでは、
私には簡潔すぎて、共感するまでに至らなかったのだと思います。

また、権威主義的な肩書きを用いての演出なのか、
設定が大企業だったり大物政治家だったりして、
大仰なだけで、むしろ、私には白々しく感じられてしまいました。


私は【言葉】も、ひとつの(よすが)と捉えています。

(よすが)→(よすか)→(寄り処)→(よりどころ)→(依り代)

心のこもった【言葉】だからこそ、相手の心に伝わるのであって、
心のこもらない【言葉】は、白々しくて、やはり心には響かないと思います。


上の段の墨カッコ【】のなかを【言葉】ではなくて、
【スピーチ】や【涙】に差し替えても、また、同じことが言えると思うのです。

いかに立派な肩書きであっても、肩書きを強調すればするほど、
「だから、なに?」「ことの本質に関係あるのか?」と、
天邪鬼な私には、疑念が芽生えてしまうのです。

肩書きは、社会的な地位を表すことが主目的ですからね。
ビジネスの場では効果的であっても、
冠婚葬祭の場で、心をこめる場で、ことさらに取りあげる必要もないでしょう。

権威主義的な演出技法が有効なストーリーもあると思いますが、
心に訴えかけるスピーチを題材にしているのであれば、
それは逆効果のように、私には思えるのでした。


こうして「本日は、お日柄もよく」を全編通して読んでみると、
エンタメ的な要素とその演出、題材としてのスピーチテクニック、
そして(おそらく作者の)政治的信条等が散見されたのですが、
この小説で、いったい何を一番にテーマとして伝えたかったのか?
どうにも私にはピンボケしてしまって、表層的にしか伝わってきませんでした。

また、その全てを伝えたいといわれても、
ちょっと盛り込みすぎのようでもあり、
感銘を受けるまでには、至らなかったのだと思います。


あぁ・・・弱輩の身で・・・思った以上に辛辣な書評になってしまいましたが、
前半の披露宴スピーチの部分は、余計な政治的駆け引きもなくて心地よく、
スピーチの心得は勉強になる一冊だと思います。
by ambitious-n700 | 2016-10-18 14:01 | 漫画・TV・映画等 | Comments(0)
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